防犯対策8
元泥棒の体験談
元泥棒曰く
『一見するとガードが堅そうな家でも、どこかしらすきがあるものだ。ガードの堅い家というと、神奈川県のみかん農家が住んでいた、大きな屋敷のことを思い出す。
正面の門扉と玄関扉には1台ずつ防犯カメラが設置され、真っ黒の番犬が見張っていた。この程度なら珍しくないが、塀を見て仰天した。複雑に折り曲げたバラ線を張り巡らせた高さ2メートル半ぐらいのブロック塀が、敷地を囲っていたのだ。バラ線の高さだけでも50センチはあっただろう。
通用門がいくつかあったが、下見のときはあえて防犯カメラが設置されている正面の門扉から侵入した。真下と裏が防犯カメラの死角になるので、真下をはうようにして通り抜けた。防犯カメラは見せたほうが威嚇になるとよく聞くが、むしろ隠してしまい、防犯カメラ作動中とでも表示しておくほうが私はいいと思う。カメラがむき出しだと、プロならどこが死角かわかるからだ。
番犬を手なづけるのはお手の物だ。「よしよし」と頭をなでて、竹輪やソーセージを食べさせ、私のにおいを嗅がせるだけ。2、3回やれば、私を見るなり尻尾を振るようになる。
下見中にちょうどいい足場を見つけた。ブロック塀の脇の物置だ。かなり高さがあるが、隣の家の雨どいから飛び移れそうだ。下見のルートより隣の家からのほうが人目に付きにくいぞ。
ねずみ小僧顔負けの侵入手口
当日は、盗みに入る家の家族が出払う10時少し前に犯行を開始した。
下見で決めたとおり、まずは隣の家の敷地に側道側から侵入した。敷地の正面には塀があったが、側道側には塀はなく植栽がうっそうとしていた。
侵入手口はねずみ小僧顔負けだ。隣の家の雨どいを上り、雨どいから、例のバラ線をまたいで物置に飛び移った。さらに、物置の脇に通っていた雨どいを伝って、2階の高窓から懸垂のような姿勢で部屋に着地した。
入ったとたん、室内犬と出くわした。人懐っこい犬だったので気にせず犯行を続けた。
最初に札束を見つけたのは、2階の若夫婦の寝室だ。枕元にあったポーチのなかに、財布と封筒が入っていた。財布に5万~6万円、封筒に20万円。幸先のよいスタートだ。
老夫婦は農作業中なので、普段使いの財布が家にあるはずだ。1階の茶の間を探したところ、婦人用と紳士用の財布が、コタツのなかと座布団の下からそれぞれ見つかった。あわせて10万円以上入っていた。
床の間に置かれていた100キログラム以上ありそうな大型金庫の中身はあきらめた。大バールのような道具で壊さないと開かないからだ。そんなものを持っていると怪しまれるので、普通は所持していなかった。
帰りも行きと同じルートをたどった。1階から帰ったほうが楽ではあるが、カギを閉めて帰れないため、犯行に気づかれやすくなる。形跡をできるだけ残さないのが私の美学だ。』
なんだか、恐ろしくなりますね。
少しでも防犯対策の参考にしてください。
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