『耐力壁の抵抗のメカニズム』
マッチ箱は外箱だけだと簡単に潰れてしまいます。しかし中身を入れると潰れにくくなるのはみなさんお分かりですね。
建物も同じで、壁がなく柱・梁だけの状態では、水平方向に押されると、小さな力でも大きな変形を起こします。
この変形を最小限に留めるのが耐力壁です。
さて、ここで「耐力壁の抵抗メカニズム」を考えましょう。
耐力壁に水平力が作用すると、菱形に変形します。
菱形に変形するとそこには対角線上に伸びようとする作用と、縮もうとする作用の2つが生じます。
引っ張り側の端部の留め方が甘いと接合部から部材が抜けようとします。
逆に、しっかり留まっていれば、部材自体が伸びて断面が細くなります。
一方収縮側の対角線には、圧縮力が働くため、部材の中央部分が面外方向に膨らんだり、部材が潰れたりします。
筋交いを使う耐力壁では、端部に金物をしっかり、規定通りに止めることが大事で、中央部も圧縮力で潰れない断面積が必要と成るわけです。
私が、能登半島地震を視察してきたときによく見かけたのが、この手の破壊です。
地震で壁が菱形に変形し、折角ある筋交いも端部に金物がなく釘止めがしてあるだけ、
菱形に変形したときに、筋交いの足元側が引き抜かれてはずれてしまっています。
この後反対側の揺れで(戻りの揺れ)はずれた筋交いが元の場所に戻らず、柱の外に飛び出し、崩壊している。
しごく簡単な崩壊のメカニズムです。
逆に、剛で強いしっかりした壁では、水平力が入ったとき、壁全体が回転し、浮き上がりが生じることになります。
これが耐力壁の抵抗のメカニズムです。
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